阿部 鷹仁
施設開発にあたってのコンセプト開発やサービスデザインをしています。特にエンタメ領域が得意です。(ご紹介はこちら)
先日の海外出張での一コマ。
空港では出国手続きの機械化が進み、おなじみの大行列が改善されてきた昨今。スイスイ進む自動レーンをよそ目に、行列をなしている有人レーンが目につきました。なぜだろうと加わってみて納得、その正体は、パスポートへの出国スタンプを希望する人々の行列でした。遠方の地まで来たことを証明するスタンプコンテンツ。場所とコンテンツの親和性を再認識した一コマでした。
今日はこんな「場所とコンテンツ」をお題に、新しい世界を妄想してみたいと思います。
示唆1:位置情報の共有
場所をコンテンツに昇華させているのは、やはり「位置ゲー」でしょう。その場所に行かないと手に入らないアイテム、その場所に行かないとはじまらない展開があり、位置ゲーは「場所」を上手に価値へと変換しています。実際に地方自治体が位置ゲーとの連携を進める事例も増えているように、コンテンツと位置情報の融合は有効性の高い手段といえます。これをひとつの軸足に、考察をもう一歩進めてみたいと思います。
示唆2:バイタルデータの共有
先般、ピラミッドフィルムクアドラさんのオフィスで「もし壁」というコンテンツを体験させていただきました。お互いに壁ドンをして、ドキドキが最高潮に達したらメッセージ交換できるという何ともいじらしいコンテンツです。個人的にこの体験のミソは「バイタルデータ」の共有にあると感じました。体温、脈拍、発汗のバイタルデータが分析され相手に共有されることで、普段は目にはみえていない新しい尺度が加わり、いじらしいコミュニケーションへと発展しています。
idea seeds:位置情報とバイタルデータを組み合わせた「生コミ」サービス
これらの示唆をふまえて、位置情報とバイタルデータをかけあわせたコンテンツを妄想してみます。スマートウォッチ、スマートリングなどのウェアラブルデバイスから取得できるバイタルデータを、端末の位置情報と紐づけて分析・公開するサービスです。世界各地でのバイタルデータの変化を「興奮度」「緊張度」「リラックス度」などの指標で、地図アプリ上から確認することができるものです。
これが実現すると例えば、
・展示会のとあるパビリオンが、人々をものすごく興奮させている
・一見地味な地方テーマパークのお化け屋敷が、人々を異様なまでに怖がらせている
・商店街の老舗銭湯サウナが、人々を日本一整わせている
・人里離れたシークレット野外フェスが、人々の心拍を爆上げさせている…
みたいなことが見て取れるようになります。その場所その場所の特性がバイタルデータによって見える化されることで、そこへの注目や人流が変わるきっかけにもなっていくでしょう。今は口コミ評価の信頼性が高いですが、より客観性の高いバイタル評価は将来、口コミを超える評価基準になるかもしれません。それは名付けるならば、口コミならぬ「生コミ」(生体データ・コミュニケーション)とでもいいましょうか笑。高齢者の見守りサービスや、建設現場の作業者安全管理サービスなど、位置情報とバイタルデータを組み合わせたサービス開発が各所で進むように、Google Mapに「生コミ」が組み込まれる日も近いのかもしれません。
人々の「生コミ」が共有された世界。ポスト・インフルエンサー的な職能として、人々の胸の高鳴りをあげる「テンション・クリエイター」が登場しているかもしれませんね。プランナーがそんな職能を担っていたいなと妄想を膨らませながら、本日のidea seedsはここまでとさせていただきます。